ストレッチ後の腰痛
ストレッチをはじめてから腰痛
Nさん 40代 女性
腰痛の心当たりを尋ねると、最初は「さっぱり思い当たらない」と言っていましたが
「そう言えば、何か運動しなきゃと思って最近ストレッチをしてます!」
「やってる時は気持ちいいんですけど。終わった後からドーンと重たい感じがしてくるんですよ」
どうしてなのか「ストレッチをした後から腰痛」に。
これは珍しい事ではありません。
実際の様子を見せて頂くと、「ここが固いんで、どんどん動かせば動く様になるかと」と、動かしている股間節からポキポキ音が‥。真面目なNさん、毎日欠かさず、はじめてから、半月位になるとのこと。
伸ばしたいところを無理のない範囲で少しずつ
ストレッチに限らず、簡単な体操等で柔軟性を高めたり、血行を促進するのは良い事です。ただし、
・必要な部位が
・現状に無理のない範囲で行われた場合、効果が期待できます。
筋を伸ばす、とにかく身体が柔らかければいいとばかり、執拗に特定の部位に固執したストレッチをしてる方が少なくありません。全身的な柔軟性と、アンバランスに引き伸ばされた筋肉とは別物です。
筋肉は、無理に伸ばし過ぎると引きちぎられない様にと、防御反応から逆に固まろうとします。
その為、伸ばし過ぎにより筋肉を痛め、逆に筋肉を緊張させている場合があります。
必要で固めているということがある
確かにコリや歪みは不快な存在ですが、身体なりに立位や歩行など活動を支えるために、必要で固めている事もあります。
しかし、「とにかくコリをほぐして柔らかく」とそれだけがクローズアップされがちで、
・必要でない部位が
・現状に無理がある範囲
までのストレッチを行った結果、冒頭の不調となる事は珍しくありません。
自分では無理をしたつもりはなくても、その後の不調が伴う場合、内容の検討が必要です。
前屈で頭がつくと「股関節が柔らかい」と思っていませんか?
よくあるストレッチの誤解を見てみます。

Aさんの方が、Bさんより股関節が柔らかいように見えます。本当にそうなのでしょうか?
下のイラストを見てみると、股関節の曲がる角度は同じことがわかります。
股関節の柔軟性は同じでも他の部位(ここでは背中)が代償することで、全く違う結果に見える一例です。

二人の共通点:股関節屈曲角度105度
二人の相違点:背中の柔軟性
BさんがAさんのようになりたければ、股関節ではなく、背中を柔軟にすることが必要になります。
狙いを定めて行われない場合、身体を不安定にさせることも
腰痛関連で多いのが、脚のだるさ解消にと股間節のストレッチをしたつもりが、実際は股間節ではなく、動きやすい胴回りばかりへのアプローチとなっているケースです。
股間節ではなく、骨盤から上のお腹周りや、動きやすい肋骨下部が引き伸ばされ、その結果、日常での動きを、更にグニャグニャとした不安定なものに誘導してしまう為、骨盤全体の拘束を強めていたりします。
また、開脚に見られる太腿の内側をやたらと伸ばすストレッチも適さない方が多いものの一つです。
歩行や日常動作で腿の内側をしっかりと使えている方が少ない為、そもそもが弱く弛緩傾向の強い部位です。
使われなさすぎて弛緩している部位というのも、血行が悪いので伸ばすと一時的に血行がよくなり、気持ち良く感じます。この部位は本来は引き締めが先ですが、この不要なストレッチが優先されてしまいます。
ただでさえ弛緩しているものをもっと薄っぺらに伸ばされることで、脚全体のアンバランスがさらに進行します。
また、こうした事で、肝心の前腿、外腿の緊張を強める結果となっている方が多くいます。
股関節は胴体を中心に、前後に振れる柔らかさ、自由度が必要です。

また、的確にアプローチ出来ていない事に気が付けず、とれないコリを木の棒等で、押し潰す様に無理やりやわらくしようとするケースもあります。引き伸ばし過ぎや、コリ潰しは毛細血管を傷付け、筋肉を傷めます。
時間はかかっても、筋肉をほぐし意識化を進め、自分自身の使いやすいものにしていくには、温める、さする、揺らす等の微細振動、揺動運動、呼吸法等を推奨しています。
10月1日に改訂版が出版されました。